組織概要 日本シェイクアウト提唱会議
Call for Formation of Advocacy Council「効果的な防災訓練と防災啓発」提唱会議の結成呼びかけ
東日本大震災による破壊と多くの犠牲者の発生は、人生が不条理に満ちたものであり、私たちはその事実を受け止めて生きていく必要があることを改めて教えてくれました。その中で防災教育の勝利といわれる釜石東中学校の村上洋子副校長は「日頃からやっていたことの成果」とその原因を分析しています。それ以外にも「普段やっていることしか、災害時にはできない」ということを、いろいろな局面で耳にいたします。このことは、今回のような大規模広域災害に対する備えとして、私たち一人一人の「防災リテラシー」を高める必要性を改めて認識させました。そして、そのための効果的な手法の開発が急務であるといえます。
では、なぜ防災リテラシーなのでしょうか。「リテラシー」とは「読み書きする」能力です。学校ですべてを教えることはできませんので、教育の基本は自ら学ぶ力を養うことであると思います。リテラシーを高めることによって、人は自らの問題関心に応じて、さまざまなことを自ら学ぶことができます。防災という分野においても同じだと思います。たとえ想定外の事態であっても、それぞれの状況に応じて、人々が自ら災害を切り抜ける力を持つことが求められており、そのためには防災に関する知識や技術を自ら学ぶことができる力を養う必要があります。これを「防災リテラシー」の向上と呼んでおります。
こうした視点に立つと、わが国の現在の防災訓練の多くは、行政主導による住民・学校動員型(従来型)の1日訓練で行われており、その内容も硬直しています。また、訓練への参加者も限られ、社会全体への防災啓発にはかならずしもなっておりません。間近に迫った東海・東南海地震、南海地震や首都直下型地震等の大規模地震を想定した場合に、現在の防災訓練のやり方を改革し、訓練への参加者数を飛躍的に増加させる方法を考えだしていくことは今日の防災にとって重要な課題となっています。
今日求められる防災訓練は従来型の訓練を発展させ、行政と住民、専門家、ボランティア等が協働して企画し、運営する協働参加型の訓練であるべきだと考えます。たとえば首都直下地震では最悪1 都3 県が同時被災します。このような広域・大規模災害では公助に限界があり、住民の自助力・共助力の向上が喫緊の課題となるからです。そのため首都直下地震においてどのような被害が発生するかについて、科学的な知見にもとづく正確な地震災害シナリオをもとにした防災訓練を行うことが、防災リテラシーの向上の大前提になると考えます。
同じ考え方に基づく官民共同の先駆的な試みが2008年以来ロサンゼルスを中心とする南カルフォルニアで“ShakeOut”という名称で続けられています。サンアンドレアス断層によるMw=7.8の地震を想定し、その被害の科学的に推定した結果をもとにして始められた防災訓練です。初年度は570 万人を動員し、以来毎年参加者は増加を続け、2011 年には950万人に達しました。
わが国でも2007 年から文部科学省特別研究「首都直下地震防災減災特別プロジェクト」を推進してまいりました。その研究成果を踏まえて、最新の知見をもとにした地震断層モデルと強震動予測を行う、それによって発生が予想される各種被害の量と空間配置について蓋然性の高い地震災害シナリオを構築し、それをさまざまなメディアを用いてわかりやすく紹介することを計画しています。また、わが国しか存在しない緊急地震速報の利用法や2010年に文部科学省がまとめた退避行動に関する分析等を踏まえて、科学的に根拠のある安全確保行動を推奨する予定です。
こうした研究者側の情報提供に応えて、首都圏各地の各セクターが抱えるそれぞれの問題点をステイクホルダー参画型で明確にし、それに対する対策を検討する機会となる防災訓練を企画したいと考えます。こうした試みは毎年継続し、その中で、地震災害シナリオを高度化させるとともに、最終的には参加者1000万人をめざし、新しい国民運動としてこの防災訓練を位置づけることを目指したいと思います。
そこで、このたび「効果的な防災訓練と防災啓発」提唱会議を立ち上げ、科学的根拠を持つ災害シナリオに基づく個々人の自主性を重視する防災訓練を中心に据えた新しい防災啓発の推進を図りたいと考えております。ぜひとも多くの人にご参加いただきたくお願い申し上げます。
Memberよびかけ人
役職・氏名 | 所属 |
---|---|
会長 林 春男 | 京都大学 名誉教授 |
副会長 平田 直 | 東京大学 名誉教授 |
世話人 今村文彦 | 東北大学災害科学国際研究所 教授 |
世話人 木村玲欧 | 兵庫県立大学環境人間学部 教授 |
世話人 重川希志依 | 常葉大学社会環境学部 名誉教授 |
世話人 田中 淳 | 東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター 特任教授 / 名誉教授 |
世話人 田村圭子 | 新潟大学危機管理本部 危機管理センター 教授 |
世話人 中林一樹 | 東京都立大学・首都大学東京 名誉教授 |
世話人 福和伸夫 | 名古屋大学 名誉教授 |
世話人 目黒公郎 | 東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター長 |
世話人 山崎文雄 | 千葉大学大学院工学研究科 教授 |
監事 河田恵昭 | 関西大学社会安全学部 特別任命教授 |
事務局長 澤野次郎 | 日本法制学会 理事長 |
2023年8月現在
(敬称略五十音順)
Call for Formation of Advocacy Council日本シェイクアウト
提唱会議
【事務局】防災教育普及協会 内
〒102-0073 東京都千代田区九段北 1-15-2 九段坂パークビル 3 階
電話 03-6822-9903 FAX 03-3556-8217
ホームページ https://www.shakeout.jp